命令教室
怒り始めることもなく、ゆっくりと体を起こす。
1人きりになってしまって、ようやく協力することの大切さを理解したのかも知れない。


「カギは?」


初日、あの部屋のカギは充が準備していた。
今は誰が持っているんだろう?


「カギはあの後すぐに返したはずだ」


ということは、事務室だ。
私達3人はまず事務室へむかった。
ドアを開けて中に入ると、本来そこにいるはずの先生の姿が一瞬見えた気がして、すぐに幻覚だと気がついた。
先生の幻は近づくと陽炎のように消えていく。

事務室の壁にかけられている何種類もあるカギには、ちゃんと部屋番号が振られているけれど、その中でもなにも書かれていないカギを正志は手にした。


「これだ」


そのカギだけやけに錆びついているのは、ずっと使われていないからか。
カギを握りしめて再び廊下を歩き始める。
私達しかいない施設内は怖いくらいに静まり返っている。
少し歩くだけで自分の足音がうるさく感じられるくらいだ。
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