命令教室
私はつい声を小さくして言う。
まわりに他の子たちもいるから、できるだけ聞かれたくない。


「何言ってんの! 普段と違う環境だからこそ、近づくことができるんじゃん!」

「そんなに大きな声出さないでよ」


慌てて香の口を押さえる。
この宿泊合宿に私の好きな人、上野修も参加すると知ったのは一週間ほど前のことだ。
修は成績もいいし、運動神経もよくて沢山の女子達に人気がある。
そんな修がわざわざ合宿に参加するはずがないと思っていたから、すごくおどろいたんだ。


『もう少し強化したい科目があるんだ』


廊下で友人と会話しているのを立ち聞きしてしまったときのことを思い出す。
修は授業で質問しそびれたところを今回の合宿で強化するつもりで参加したらしい。
それを聞いたときさすが! と思ってしまった。
私みたいにまるっきりダメな科目があるから強制的に参加させられた生徒とは違うんだ。
そう考えるとちょっとだけ自分が情けなくなる。
もっとちゃんと勉強して、修の隣に立てるようになりたい。


「でも、早く告白しちゃわないと、修なんて人気がありすぎるんだからさ」


ポンッと香が私の背中を叩く。
うぅ、そう言われるとなんにも言えなくなってしまう。
ライバルは先輩にも後輩にもいることを知っているから、焦る気持ちも確かにあった。
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