命令教室
本当はひとりでも廊下へ逃げ出したかったけれど、私はライトを持っていない。
薄暗くて気味の悪い廊下でひとり待つのも嫌だった。
そうこうしている間に未来は私の腕を振り払って机に近づいていく。

この部屋の中で調べられそうな場所と言えば、机と襖くらいなものだ。
そこを確認すれば満足してくれるだろう。
もう少しの時間我慢するだけだ。
自分にそう言い聞かせた、そのときだった。

あぁぁ……うぅう……。

低い唸り声か、泣き声に似た声が聞こえてきて私は悲鳴を上げてその場に飛び上がっていた。


「ちょっと、なに!?」


机の引き出しを開けようとしていた未来が驚いて振り返る。


「い、いま、声が聞こえた!」


ガタガタと全身を震わせる私に他の4人は目を見交わせている。


「なにも聞こえなかったぞ?」

「嘘! 絶対に聞こえた!」


充の言葉に私は強く左右に首をふる。
今のは絶対に聞き間違いなんかじゃない!
< 22 / 236 >

この作品をシェア

pagetop