命令教室
先生はそう言いながら順番にプリントを配ってくれる。
普段は各科目専門の先生がいるけれど、今回は担任の西牧先生ひとりが5科目を教えてくれることになっている。
つまり、私達の成績はそれくらい悪いということなんだけど……。

配られたプリントを見ると軽くメマイを感じた。
白い紙に上から下までびっしりと問題が印刷されている。
これを見ているだけで眠くなってしまいそうだ。
特に寝不足な私は本当に眠ってしまわないように注意しなきゃいけなかった。


「なにこれ、全然わかんない」


隣の香はさっそく頭を悩ませている。
他の子たちも似たりよったりで、西牧先生は開始早々に引っ張りだこだ。
あれだけあちこち行き来していたら、少しくらい眠ってしまっても気が付かれないかもしれない。
私は口元に手を当てて大あくびをする。
あくびをしたせいで涙が滲んできてプリントの文字が読めなくなった。


「歩、全然勉強する気ないでしょ」


香に言われて苦笑いを浮かべる。
今頃になってこんなに眠くなるなら、昨日少しでも眠っておけばよかった。
と、今更後悔してももう遅い。
私は吸い込まれるように夢の中へ落ちていったのだった。
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