命令教室
☆☆☆

どれくらい時間が経過しただろうか。
先生の「なんだこれは?」という声が聞こえてきて私の意識が浮上した。
てっきり自分の居眠りがバレたのかと思って緊張したけれど、それにしてはさっきのセリフはおかしい。

居眠りを指摘するなら『起きろ』とか『朝だぞ』なんて言うのが普通だ。
まだ半分眠っている頭を無理やり起こして教室内を見回してみると、みんなプリントに飽きてしまったのか、膝の上で本を広げていたり、スマホをいじっていたりする。
先生は教室前方に置かれているホワイトボードを見つめていた。


「どうしたんですか?」


先生に声をかけたのは未来だ。


「これ、なんだかわかるか?」


そう言って生徒に見えるように体をずらすと、ホワイトボードには『誕生日を祝う日』と書かれていた。
私は目をパチクリさせてその文字を見つめる。


「誕生日って、今日誰か誕生日なの?」


未来が誰にともなく質問するけれど、数人の生徒が左右に首を振っただけだった。
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