命令教室
☆☆☆

とにかく先生と連絡が取れればそれで安心できる。
冗談やめてよと笑って許すことができる。
事務室までやってきた私達は祈るような気持ちで、潤が電話番号を押すのを見つめる。
潤の指先は迷いなく先生の番号をプッシュしていく。

どうして番号を覚えていたのか気になったけれど、今はそれどころではなかった。
最後まで番号を押し終えた潤に期待の視線が集中する。
受話器からは微かにコール音も聞こえてきているから、これで先生が出てくれれば……。
祈る気持ちになった次の瞬間、潤が「ひっ」と小さく悲鳴を上げて受話器をデスクに落としていた。
ゴトンッと鈍い音が響く。


「どうした!?」


修がすぐに聞くが、潤は目を丸くしたまま硬直してしまっている。
落下した受話器から微かに聞こえてくるのはザーザザーという砂嵐の音だ。


「もしもし先生? もしもし!?」


修が受話器を耳に当てることなく、声をかける。
しかし先生の声は一向に聞こえてこない。
それどころか砂嵐の音は徐々に大きくなっていくようだ。


「おいお前! ちゃんと先生の番号にかけたんだろうな!?」


正志が潤に詰め寄る。
潤は青ざめた顔で何度も頷いた。
今にも泣き出してしまいそうだ。


「もう1度かけ直してみよう」
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