命令教室
建物の中は手分けをしてもいなかったのだから、後は外しかない。
あの短期間に外まで出たとは思えなかったけれど、マジックだとすれば可能性はゼロじゃない。
その可能性にすがりつくようにして私達は全員で玄関へと走る。
外から差し込む太陽の光はすでに薄暗くなりはじめていて、あと30分もすれば建物は暗闇に包み込まれてしまうだろう。

山の夜は早い。
出入り口のガラス扉は観音開きになっていて、充と正志が左右を同時に押し開いていく。
外の風を感じて少しだけ心が安心していく。
やっぱり、ずっと建物内にいたから気持ちもふさぎ込んでいたのかもしれない。
そう思いながら一歩外へ踏み出そうとしたときだった。
突然、前から肩を押された感覚があって私の体は数歩後ずさりをしていた。


「どうしたの?」


香が不思議そうな表情を向けてくる。


「今、なんか……」


そこまで言って言葉を切った。
確かに肩に触れられた感触が残っているものの、そこにはなにもない空間が広がっている。
唖然として立ち尽くしていると今度は充と正志が外へ出ようとして弾き飛ばされていた。
さっきの私よりも強い力で押されたようで、ふたりとも同時に尻もちをついてしまった。


「ちょっと、なんなの!?」
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