命令教室
ついさっきまで潤が居た場所にはただの空間が広がるばかりだ。


「潤が消えたんだ……」


私は愕然としてその場に膝をついてしまった。
全身から力が抜けていって、なかなか立ち上がることができない。


「どうせまた、マジックでしょう?」


言ったのは香だ。
自分で言いながらもそうじゃないと理解しているようで、顔は真っ青だ。


「どこに隠れたの? 出てきてよ」


香は教室後方のロッカーをひとつずつ開けていく。
どれも正方形の小さなもので人が入れるスペースがないことは見ただけでわかるのに。
それでも香はロッカーの戸を開けていく。


「出てきてよ潤!」


次第に声が大きくなり、涙がにじみはじめる。


「悪ふざけはよして!」


最後のロッカーを開けたとき、香もその場に膝をついてしまった。
両手で顔をおおって肩を震わせている。
すぐに駆け寄ってあげたいけれど、動くことができなかった。
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