命令教室
☆☆☆

教室へ入ると他の子たちが全員集まっていた。
みんなホワイトボードの前で棒立ちになったり、座り込んだりしている。
私たちが教室へ入っても誰も反応を示さないくらいに疲れ切っていた。


ホワイトボードに近づいて今日書かれていることを確認すると「グラウンド100周の日だってさ」と、純子が呟いた。
その声は自虐的な笑いを含んでいる。


「100周って、走るってこと?」

「普通に考えたらそうだよね。だけどそうは書かれてないからわからない」


誰にともなく聞いた質問に純子が早口で答えた。
この炎天下の中で100周もしたら倒れてしまう。
下手をすれば死んでしまうかもしれない。
昨日よりもさらに過酷な命令に目の前が真っ暗になってしまいそうになる。


「走れとも書いてないし、休むなとも書いてない。たぶん、自分たちのペースで大丈夫なんだと思う」


願うような声色で言ったのは彩だ。
彩は足を怪我しているから走るのは到底無理そうだ。
彩の隣にいる花もふっくらとした体型で運動は大の苦手だったし、ふたりにとってはこの試練はかなり厳しいものになる。


「でも問題は、フラウンドに出られるかどうかだよな」


冷静に言ったのは正志だ。
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