命令教室
「そうだよね。私達施設から一歩も外に出られなかったんだし」
屋上のフェンスに近づいただけでもなにかの力によって弾き戻されてしまった。
それなのにグラウンド100周なんてできるはずもない。


「それで、犯人は誰だったんだ?」


いきなり話題を変えたのは修だった。
修の視線は充へ向いている。
壁際に座り込んでうつむいていた充がゆっくりと顔をあげる。
その目はまだ充血していて、眠れていないことがわかった。
充の足元にはバッドが転がっているけれど、使ったのかどうかはわからない。


「いや……」


充は力なく左右に首を振った。


「ずっと教室にいたけど、誰も入ってこなかった。気がついたら、文字が書かれてた」


その言葉に未来が頭を抱えて声にならない悲鳴を上げる。
本当はずっと前から非現実的な現象が起こっていることには気がついていた。
けれど、実際に犯人がどこにもいないとわかってしまって、更に追い打ちがかけられたのだ。


「もしかしたら充が犯人だったりしてね?」


攻めるような声で言ったのは純子だ。
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