夜空へ虹の架け橋を

 一見若いがところどころ白髪混じりのこの男性には見覚えがある。

 結弦のお父さんだ。

 日曜日は仕事があるため、平日にしかお見舞いに来れないと結弦のお母さんから聞いていた。

 だからこれまでも結弦のお父さんとはあまり話をしたことはなかった。

 長期連休になるとたまに顔を合わせることはあったが、この状況で判断できるほど聞き慣れた声ではない。


「こんにちは。お久しぶりです」


 挨拶を返すと、結弦のお父さんは一瞬目を見開いてから、


「あぁっ、琴音さん。久しぶりだね」


 と、笑顔を見せてくれた。

 ずぶ濡れで髪もぐしゃぐしゃだったので、おそらくわたしだと気づかなかったのだろう。

 着替えてくればよかったなと後悔したが、もう遅い。

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