夜空へ虹の架け橋を

 車窓から見える景色が、灰色のビルから鮮やかな新緑へと変わっていく。

 田舎の景色や空気は好きだ。

 都会にはない森のにおい。

 肌をなでる風も、透明に煌めいているような気がする。

 子どもの頃は両親がたまに連れていってくれる海や山への旅行を、いつも楽しみにしていた。


「海も見たかったな」


 遠くまで広がる田園風景を眺めてひとりごちた。

 海には数えるほどしか行ったことがない。

 もしも生まれ変わりというものがあるのなら、是非とも次は海辺の町でみんなと暮らしたい。

 結弦と怜は水泳部だったし、陸上部だった美輝も海沿いの道をジョギングなんてシチュエーションを気にいってくれそうだ。

 不明瞭な未来を想像して「ふふっ」と笑みをこぼすと、みんなと出会った記憶が甦る。

 思い返せば、なんだか不思議な出会いだった。

 外の景色に目をやりながら、視線はなにを捉えるでもなく、わたしの頭の中は高校生の頃の回想を始めた。

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