夜空へ虹の架け橋を
5.孤独の理由
高校生になるまで、わたしはずっとひとりだった。
小学生の頃、土日は母からピアノのレッスンを受けていたため学校以外で友達と過ごすことはなく、週明けの教室ではいつも会話に馴染めなかった。
休日を思い返して楽しそうにお喋りをする友達の輪に一応入って、なんとなく疎外感を受けながらも顔に笑顔を貼りつけて過ごす毎日。
そのまま中学生になるとクラスメイトとはほとんど自然に話せなくなった。
休日をすべて母のレッスンに費やしているうちに性格まで内気になってしまったらしい。
知らない話題に作り笑いを浮かべることも苦痛に感じるようになった。
だから昼休みもひとりでいることが多かった。
お弁当をひとりで食べている姿を気にかけて誘ってくれる子もいたが、素直にお喋りができない。
適当に相槌を打ち、いつも乾いた作り笑いばかりを浮かべていた。
そんな自分がとても惨めに思えて、二年生になる頃、ピアノを理由にわたしは進んで孤独になった。
でも本当は体育祭や文化祭でクラスを盛り上げたり、なにかに向かってひとつになるクラスメイトの姿や、誰かと机をくっつけてお弁当を食べる昼休みに憧れていた。
特にいじめられていたわけでもなかったし、ただ存在が薄いだけ。教室の中の空気となにも変わらない。
幸いにもピアノの実力が評価され、行事のときにわたしがピアノを弾く役割を担うこともあったので嫌われていなかったとは思うけれど、今となってはわからない。