その涙が、やさしい雨に変わるまで
――あなたは、これから美沙希さんと結婚するのでしょ!
この三琴のセリフも胸を抉る。わかってはいるものの、今さらながらに再認識もする。
(そうだった。僕は結婚するんだった)
(美沙希さんと、入院時からずっと支えてくれた美沙希さんと僕は結婚する)
挙式まで半年を切っている。式のことはほとんど美沙希に任せているから、瑞樹がするのは決定事項を了承するだけだ。
式のスタイルや次第、披露宴のメニューや演出などは美沙希が、招待客は両親と美沙希があれこれと相談している。新郎は蚊帳の外という状態ではあるが、結婚式の主役は花嫁だと思っていれば彼女に主導権を握ってもらうほうがいい。
実際問題として、時間の融通の利く美沙希が動くほうが合理的だとも思えば、挙式準備を介して両親とのコミュニケーションが深めることも期待する。
そう、瑞樹はすっかり彼女に甘えて、業務に集中している。
業務に集中しているのだが……
――あなたは、これから美沙希さんと結婚するのでしょ!
この三琴のセリフがいつまでも瑞樹の耳奥で響き、こびりついている。
(僕は結婚する、美沙希さんと)
記憶を失い不安に苛まされていた瑞樹が手を伸ばした相手は、通りすがり救護人の美沙希であった。長年、業務をともした三琴ではない。
結婚というとてもプライベートな場面に、三琴が出てくることはない。彼女はビジネスパートナーなのだから。
――辞めていく私のことなんて、もうどうだっていいじゃないですか!
三琴の存在が瑞樹のプライベートには全く関係のないものであれば、瑞樹の存在だって三琴のプライベートに無関係だ。瑞樹に干渉する権利はない。だからこの三琴の主張は極めて真っ当だ。
極めて真っ当なのに、先のヒアリングから、いや脩也から電話をもらった日から、もっといえば三琴から辞職願が提出された日から、瑞樹の中でずっとつっかえているものがある。
(僕は結婚する、美沙希さんと)
(こんな精神状態で、結婚していいものなのか?)
この三琴のセリフも胸を抉る。わかってはいるものの、今さらながらに再認識もする。
(そうだった。僕は結婚するんだった)
(美沙希さんと、入院時からずっと支えてくれた美沙希さんと僕は結婚する)
挙式まで半年を切っている。式のことはほとんど美沙希に任せているから、瑞樹がするのは決定事項を了承するだけだ。
式のスタイルや次第、披露宴のメニューや演出などは美沙希が、招待客は両親と美沙希があれこれと相談している。新郎は蚊帳の外という状態ではあるが、結婚式の主役は花嫁だと思っていれば彼女に主導権を握ってもらうほうがいい。
実際問題として、時間の融通の利く美沙希が動くほうが合理的だとも思えば、挙式準備を介して両親とのコミュニケーションが深めることも期待する。
そう、瑞樹はすっかり彼女に甘えて、業務に集中している。
業務に集中しているのだが……
――あなたは、これから美沙希さんと結婚するのでしょ!
この三琴のセリフがいつまでも瑞樹の耳奥で響き、こびりついている。
(僕は結婚する、美沙希さんと)
記憶を失い不安に苛まされていた瑞樹が手を伸ばした相手は、通りすがり救護人の美沙希であった。長年、業務をともした三琴ではない。
結婚というとてもプライベートな場面に、三琴が出てくることはない。彼女はビジネスパートナーなのだから。
――辞めていく私のことなんて、もうどうだっていいじゃないですか!
三琴の存在が瑞樹のプライベートには全く関係のないものであれば、瑞樹の存在だって三琴のプライベートに無関係だ。瑞樹に干渉する権利はない。だからこの三琴の主張は極めて真っ当だ。
極めて真っ当なのに、先のヒアリングから、いや脩也から電話をもらった日から、もっといえば三琴から辞職願が提出された日から、瑞樹の中でずっとつっかえているものがある。
(僕は結婚する、美沙希さんと)
(こんな精神状態で、結婚していいものなのか?)