その涙が、やさしい雨に変わるまで
 そうして眠ること、数時間。目が覚めたのは空腹のせいだった。
 腹だけでなく、喉も乾いている。ミネラルウォーターを取りにキッチンへいけば、部屋が暗い。夕方かと思ったが、時計をみれば朝の四時。翌日の朝だ。なんと、三琴は半日以上眠っていたのだった。

 こんなに眠ってしまっては、もう二度寝できない。早いけれど、出勤の準備をする。
 数時間後には受付嬢三琴の最後の週の出勤がはじまる。勤続年数、約六年の集大成となる週であれば、まだまだ緊張感を手放してはいけない。念入りに化粧をしながら、ふと気がついた。

(そうだ。連絡しておかないと)

 瑞樹と会う段階では、三琴はまだ脩也へオファーの返事を出していなかった。
 メールなら時間は関係ないだろうと、三琴は脩也へメッセージを打つ。シカゴの企画に参加する意思はある。ただし、二ヶ月のインターンシップを体験してから本採用の手続きをしてほしいと。
 日本国内の転職なら即本採用を希望するのだが、勤務地が海外となれば、この点で三琴は躊躇していた。脩也が設定していインターンシップ制度はありがたかった。
 雨の中で瑞樹との対話を終えた三琴に、もう思い残すことはない。脩也へのメッセージはすらすらと書けたのだった。

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