その涙が、やさしい雨に変わるまで
 脩也からの返事は、月曜日の夕方に届いていた。インターンシップ制度の利用に問題はないとある。三琴の要望は通っていた。
 それ以外にも新しくはじまるシカゴ生活での諸手続き、留守にする間のやっておくといい日本での申請など、丁寧な海外赴任ガイダンスが添付されていた。
 脩也の元で働くことは二ヶ月のインターンシップ期間で終わるかもしれない。それでもいろいろ手続きが必要とわかる。

(思っていたのよりも大変そう)
(この件は……今週中には無理。来週にするとして……)
(うーん、この場合はどうするんだ?)

 秘書でこの手の海外赴任の書類を書いたことはあるが、自分が対象となるのははじめてだ。さらに、それを持って、自分が関連機関へ提出したり面談を受けたりする。秘書のときは書いて終わりであったが、今回はそうはいかない。

(忙しくなる)
(ぼぉっとなんてしてられない)
(え、もうフライト、押さえてあるじゃない!)

 七月の初旬の便が、予約されていた。三琴の回答云々とは関係なしに、脩也は席を確保してあった。このフライトまでに準備が間に合わなければ、後日渡米可とある。
 あとからおいでといわれても、それは遠慮したい。一緒に飛んでいくほうが、何かと安心だし、心強い。
 最後に、脩也はこう結んであった。

――シカゴには春奈さんもくるから、安心して。
――新天地では、楽しくやっていこうぜ!

 いかにも脩也らしい励まし方に、三琴は頬が緩んだのだった。

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