その涙が、やさしい雨に変わるまで
おまけ*そこにある、愛しい人
(こちら、「11*その涙が、やさしい雨に変わったなら」でカットした部分になります。個人的には気に入っていたエピソードなので、おまけとして公開します。よろしければ、どうぞ)
184Pの再会の夜からの続きになります。
↓
↓
翌朝、瑞樹の腕の中で三琴は目を覚ました。夜明けすぐの朝の部屋は、薄明かりの世界だ。そのおぼろげな光の中で三琴はあるものを見つけてしまい、びっくりした。
それは、どーんと控える一枚の大きなパネル。ベッドから眺めるのにちょうどいい位置にかけられていて、強く自己主張していた。
大判ポスターサイズのその写真パネルは全体の色調が暗めであったから、昨晩の触れ合いのときには三琴は全くそれに気がつかないでいたのであった。
ふるふると震えながら、三琴は自分のフォトをガン見した。
「え! 待って! どうしてこれが、ここに?」
この写真を、三琴はよく覚えている。これは脩也に誘われていったバラ園で、春奈が撮ったあのフォトだ。後日、勉強会打ち上げの飲み会で酒の肴にされた一枚でもある。それが拡大現像されて、ここにある。
「ああ、兄さんがくれたんだ」
タオルケットにくるまったまま身を起こした三琴を、ほぼ同時に目を覚ました瑞樹が後ろから抱き包む。そっと三琴のこめかみにキスをして、瑞樹はフォトの出所をささやいたのだった。
すぐに三琴は勘付いた。
このフォトを撮ったのは、春奈。その春奈の夫は、装飾デザイナーの裕介。その裕介は、脩也のシカゴプロジェクトに参加しているが、別件に関与しているから日本在住である。
簡単にからくりがわかる。
大ボスの脩也が「奥さんの撮ったあの写真、パネル加工して弟のところへ送ってくれ」とひと言、裕介に告げたに違いない。
「あの、こんな大きなの、恥ずかしんだけど」
春奈からもらったものもA4サイズだったのに、これはその何倍になるのだろうか?
もしかしたら実物大の三琴よりも大きいかもしれない。
三琴の恐縮する声とは正反対の明るい声で、瑞樹がいう。
「そうか。僕は毎日、これをみて仕事の活力にしていたんだけど」
「!」
その瑞樹の言葉は嬉しい。三琴のことをとても愛してくれているのが、よくわかるから。
でも被写体となった三琴は、モデルでも何でもない一般人だ。こういうことに慣れていない。照れくささしかない。
(せめて、私のいないところで……)
(いや隠れてみる……なんていうのも、それも……ヘンタイというか、ストーカーというか……)
(もう、脩也さん、何てことしてくれるのよ!)
瑞樹の腕の中で三琴は赤くなるばかり。
そんなこと、一向に気にしない瑞樹は三琴の首筋にキスを落とし、手は滑らかな恋人の肌を楽しもうとタオルケットのすき間を探る。
休日はまだはじまったばかり。スタート段階でこんなことでは、きっとまだ何かびっくりするようなことが起こりそうだ。そんな予感が三琴はしてならない。
パネルは恥ずかしいの一点張りだが、瑞樹の喜び方が尋常でない。
「…………」
恋人の顔をみれば、朝から熱烈な視線を投げかけてくる。実物がここにいるといわんばかりの。
こんなに喜んでいるのなら、もういいかと瑞樹に甘い三琴がいたのだった。
↓
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185Pの朝食の風景へ続きます。
184Pの再会の夜からの続きになります。
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翌朝、瑞樹の腕の中で三琴は目を覚ました。夜明けすぐの朝の部屋は、薄明かりの世界だ。そのおぼろげな光の中で三琴はあるものを見つけてしまい、びっくりした。
それは、どーんと控える一枚の大きなパネル。ベッドから眺めるのにちょうどいい位置にかけられていて、強く自己主張していた。
大判ポスターサイズのその写真パネルは全体の色調が暗めであったから、昨晩の触れ合いのときには三琴は全くそれに気がつかないでいたのであった。
ふるふると震えながら、三琴は自分のフォトをガン見した。
「え! 待って! どうしてこれが、ここに?」
この写真を、三琴はよく覚えている。これは脩也に誘われていったバラ園で、春奈が撮ったあのフォトだ。後日、勉強会打ち上げの飲み会で酒の肴にされた一枚でもある。それが拡大現像されて、ここにある。
「ああ、兄さんがくれたんだ」
タオルケットにくるまったまま身を起こした三琴を、ほぼ同時に目を覚ました瑞樹が後ろから抱き包む。そっと三琴のこめかみにキスをして、瑞樹はフォトの出所をささやいたのだった。
すぐに三琴は勘付いた。
このフォトを撮ったのは、春奈。その春奈の夫は、装飾デザイナーの裕介。その裕介は、脩也のシカゴプロジェクトに参加しているが、別件に関与しているから日本在住である。
簡単にからくりがわかる。
大ボスの脩也が「奥さんの撮ったあの写真、パネル加工して弟のところへ送ってくれ」とひと言、裕介に告げたに違いない。
「あの、こんな大きなの、恥ずかしんだけど」
春奈からもらったものもA4サイズだったのに、これはその何倍になるのだろうか?
もしかしたら実物大の三琴よりも大きいかもしれない。
三琴の恐縮する声とは正反対の明るい声で、瑞樹がいう。
「そうか。僕は毎日、これをみて仕事の活力にしていたんだけど」
「!」
その瑞樹の言葉は嬉しい。三琴のことをとても愛してくれているのが、よくわかるから。
でも被写体となった三琴は、モデルでも何でもない一般人だ。こういうことに慣れていない。照れくささしかない。
(せめて、私のいないところで……)
(いや隠れてみる……なんていうのも、それも……ヘンタイというか、ストーカーというか……)
(もう、脩也さん、何てことしてくれるのよ!)
瑞樹の腕の中で三琴は赤くなるばかり。
そんなこと、一向に気にしない瑞樹は三琴の首筋にキスを落とし、手は滑らかな恋人の肌を楽しもうとタオルケットのすき間を探る。
休日はまだはじまったばかり。スタート段階でこんなことでは、きっとまだ何かびっくりするようなことが起こりそうだ。そんな予感が三琴はしてならない。
パネルは恥ずかしいの一点張りだが、瑞樹の喜び方が尋常でない。
「…………」
恋人の顔をみれば、朝から熱烈な視線を投げかけてくる。実物がここにいるといわんばかりの。
こんなに喜んでいるのなら、もういいかと瑞樹に甘い三琴がいたのだった。
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185Pの朝食の風景へ続きます。