その涙が、やさしい雨に変わるまで
――そういうわけで、兄さんは家に戻ることができない。僕も、兄さんとの接触を禁じられている。
――え? 瑞樹さんには関係のないことと思うのですが、お兄さまに会えないのですか?
――絶対ってわけではないけど、会えば親はいい顔をしないからね。
少し寂しそうな笑顔を浮かべて、瑞樹がいう。喧嘩別れしている家族のことを、瑞樹はどちらも好きであれば、どちらにも味方できないんだなと三琴は彼の苦しい心内を察した。
――親は、僕が兄さんに感化されて、会社を継ぎたくないなんていい出されたらと警戒しているんだ。兄さんが家に戻ることはないと思うし、社は僕が引き継ぐつもりでいるけれど、やはり親は親で気が気でないらしい。
品行方正で、誰よりも熱心に社に貢献し、親の期待に応えようと並々ならぬ努力している瑞樹のことを、社の皆が知っている。でもその朗らかな笑顔の裏で、こんな親子不和なことがあった。
どんなタフな案件でも笑顔を絶やさない瑞樹、その彼の鋼の精神力は脱帽ものである。ハードなオンだけでなく、休息したいオフのときにも、笑顔の仮面を張り付けていなければならないなんてと三琴は思う。
瑞樹が将来、会社のトップに立つのは既定路線である。それだけでも重責なのに、兄の分まで彼は背負っていた。三琴がもうひとりの瑞樹を知った瞬間だった。
――え? 瑞樹さんには関係のないことと思うのですが、お兄さまに会えないのですか?
――絶対ってわけではないけど、会えば親はいい顔をしないからね。
少し寂しそうな笑顔を浮かべて、瑞樹がいう。喧嘩別れしている家族のことを、瑞樹はどちらも好きであれば、どちらにも味方できないんだなと三琴は彼の苦しい心内を察した。
――親は、僕が兄さんに感化されて、会社を継ぎたくないなんていい出されたらと警戒しているんだ。兄さんが家に戻ることはないと思うし、社は僕が引き継ぐつもりでいるけれど、やはり親は親で気が気でないらしい。
品行方正で、誰よりも熱心に社に貢献し、親の期待に応えようと並々ならぬ努力している瑞樹のことを、社の皆が知っている。でもその朗らかな笑顔の裏で、こんな親子不和なことがあった。
どんなタフな案件でも笑顔を絶やさない瑞樹、その彼の鋼の精神力は脱帽ものである。ハードなオンだけでなく、休息したいオフのときにも、笑顔の仮面を張り付けていなければならないなんてと三琴は思う。
瑞樹が将来、会社のトップに立つのは既定路線である。それだけでも重責なのに、兄の分まで彼は背負っていた。三琴がもうひとりの瑞樹を知った瞬間だった。