その涙が、やさしい雨に変わるまで
――でも、いいんですか? 私、写真のことはよくわからないので、意見を求められても的外れなことをいうかもしれませんよ。
――一般的な意見がほしいから、むしろ大歓迎。それに春奈さんのモデルを務めたから、是非、彼女のフォトを受け取ってもらえないだろうか?

 三琴としては春奈のモデルになった覚えはないが、何枚か写真を撮られた。彼女のフォトとは、それだ。
 撮影会お手伝いのバイトは楽しかったし、そのメンバーとの食事に声掛けされる。おまけにプロの写真もついてくるともなれば、三琴に断る理由はない。

――それでは、またお邪魔します。よろしくお願いします。
――オッケイ! じゃあ、あとで連絡する。

 こんな感じで三琴の一日アルバイトは、『打ち上げにご招待』というオマケがついて終わったのだった。


 ***


「ふうん~、なんだか、学生のピクニックみたい」

 バラ園の撮影会の翌週に、三琴は彩也子とともに『外ランチ』に出ていた。ここは『デリシャス・スプーン』。本日で二回目となる三琴の『外ランチ』である。

「入園料は季節変動制で少し高かったけど、あんなものだと思う。納得の料金だったよ。問題は、車がないといけない場所ってことね」
「えー、最寄駅からのバスとか出ていないの?」
「んー、あるとは思うけど、あの雰囲気では本数は少なそう」

 ランチを食べ終えデザートがくるまで、三琴は撮影会会場となったバラ園のパンフレットを彩也子へみせた。
 彩也子は紙面の交通案内をみて、そうだねーと同意する。

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