その涙が、やさしい雨に変わるまで
「松田さん、本日の業務終了後にお話ししたいことがあります。僕に、あなたのお時間を頂戴出来ないでしょうか?」
この菱刈のセリフに、三琴は目が丸くなった。
(ちょっと待って!)
(菱刈さんって、確か……)
この三琴の思考を読んだのか、菱刈はさらりとこう切り返してきた。
「いやいや、そういうんじゃなくて、二年前の業務について確認したいことがあるのです」
焦る三琴に対して菱刈は業務だと弁明する。全然余裕のポーカーフェイスで。
そして、
「だから、そちらのお嬢さんもそんな怖い顔しないで」
と、三琴にみせた涼しい顔を、菱刈は彩也子にも向けたのだった。
(え? 怖い顔?)
菱刈のセリフを受けて、思わず三琴は隣の彩也子をみてしまう。
そこにはとても不機嫌な表情の彩也子がいた。
彼女はまだ業務途中であるにもかかわらず、内線電話の受話器を当てたまま菱刈のことをガン見している。彩也子にすれば、ちょっと気になる社員がそばまでやってきた。それゆえに別件対応中でも彼女の耳は三琴と菱刈の会話を拾っていたのだ。
三琴だってそこまで親しくない菱刈から「お時間を割いてください」といわれてびっくりした。だが彩也子は、さらにその上をいっていたのだった。
この菱刈のセリフに、三琴は目が丸くなった。
(ちょっと待って!)
(菱刈さんって、確か……)
この三琴の思考を読んだのか、菱刈はさらりとこう切り返してきた。
「いやいや、そういうんじゃなくて、二年前の業務について確認したいことがあるのです」
焦る三琴に対して菱刈は業務だと弁明する。全然余裕のポーカーフェイスで。
そして、
「だから、そちらのお嬢さんもそんな怖い顔しないで」
と、三琴にみせた涼しい顔を、菱刈は彩也子にも向けたのだった。
(え? 怖い顔?)
菱刈のセリフを受けて、思わず三琴は隣の彩也子をみてしまう。
そこにはとても不機嫌な表情の彩也子がいた。
彼女はまだ業務途中であるにもかかわらず、内線電話の受話器を当てたまま菱刈のことをガン見している。彩也子にすれば、ちょっと気になる社員がそばまでやってきた。それゆえに別件対応中でも彼女の耳は三琴と菱刈の会話を拾っていたのだ。
三琴だってそこまで親しくない菱刈から「お時間を割いてください」といわれてびっくりした。だが彩也子は、さらにその上をいっていたのだった。