その涙が、やさしい雨に変わるまで
「もう転職先は決まった?」
「いえ、まだです。そろそろ具体的なアクションに移ろうかなと……」
冷静を装っても、やはり三琴は嬉しい。嬉しさから緊張が取れて、うっかり三琴は正直に現状を口にした。
ところが最後まで三琴のセリフを瑞樹はきかなかった。三琴のセリフに被せるように、彼はいい放った。
「では近いうちに松田さんは就活に移るとして、私の兄とはどういう目的で会ったのかな? 時期が時期だけに、とても気になってしまうんだ。そのあたりのことを、是非きかせてもらえないだろうか?」
(兄?)
(目的?)
「兄……とは、しゅ、脩也さんのことですか?」
「そう、脩也兄さんのこと。先日、その兄から電話をもらったのだけど、そこで松田さんが兄の元でアルバイトをしたともきいた。兄がいうには、松田さんに連絡を取って、話の流れでそうなったというのだけど、これはどういうこと? そもそも、私は兄に松田さんの連絡先を教えた覚えもないし、松田さんにも兄の連絡先を教えた覚えもないんだけど」
先日のバラ園でのアルバイトのことが、瑞樹に知られていた。
自分に許可なく家族と接触した――そのことで、ひどく瑞樹は心外している。
瑞樹のセリフが終われば、三琴の前には退社願を提出したときと同じ厳しい顔をした元上司がいたのだった。
「いえ、まだです。そろそろ具体的なアクションに移ろうかなと……」
冷静を装っても、やはり三琴は嬉しい。嬉しさから緊張が取れて、うっかり三琴は正直に現状を口にした。
ところが最後まで三琴のセリフを瑞樹はきかなかった。三琴のセリフに被せるように、彼はいい放った。
「では近いうちに松田さんは就活に移るとして、私の兄とはどういう目的で会ったのかな? 時期が時期だけに、とても気になってしまうんだ。そのあたりのことを、是非きかせてもらえないだろうか?」
(兄?)
(目的?)
「兄……とは、しゅ、脩也さんのことですか?」
「そう、脩也兄さんのこと。先日、その兄から電話をもらったのだけど、そこで松田さんが兄の元でアルバイトをしたともきいた。兄がいうには、松田さんに連絡を取って、話の流れでそうなったというのだけど、これはどういうこと? そもそも、私は兄に松田さんの連絡先を教えた覚えもないし、松田さんにも兄の連絡先を教えた覚えもないんだけど」
先日のバラ園でのアルバイトのことが、瑞樹に知られていた。
自分に許可なく家族と接触した――そのことで、ひどく瑞樹は心外している。
瑞樹のセリフが終われば、三琴の前には退社願を提出したときと同じ厳しい顔をした元上司がいたのだった。