ようこそ、むし屋へ ~深山ほたるの初恋物語編~
知りたくなかった気持ち。
「でね、篤君が」
「篤のことを思うなら、笑ってないで部活行くように説得した方がいいんじゃない?」
(しまった)
つい、きつい口調になってしまい、慌てて作り笑いを浮かべた。
「ほら、篤ってちゃんと言わなきゃわかんない、ガキみたいなとこあるから」
「そうかな」
「そうそう」
チラリと紗良を伺うと、紗良は「そうかもね。私、部活行くように説得してみるね」と、感心したように頷いて、再びクッキー生地を捏ね始めた。
ふう、と小さくため息。危ない、危ない。
「ほたるちゃんは、このクッキー篤君にあげるの?」
「え? は? まさか!」
思わずハンドミキサーを浮かしてしまい、メレンゲがぴしっと顔に飛んだ。
「あげないの?」
「当たり前じゃん」
フリフリのエプロンが似合う紗良。男子はこの姿に萌えるんだろうな。
「ほたるちゃんは、篤君のことどう思ってる?」
「どうって、幼馴染みの友達だけど」
「それだけ?」
紗良の真っすぐな瞳に嫌な予感がした。ももちゃんがこっそり聞き耳を立てている。
「もちろん。それ以外ないじゃん」
「良かったー」と微笑む紗良。ヤバイ。と、思った。
ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ。
「バカなこと言ってないで、手を動かそう」
この話題はさっさと切り上げないとヤバイ。ほたるはメレンゲ作りに集中する。
ガーーーと、ハンドミキサーが立てる騒音が響いているのに、妙に自分の心臓の音が大きく聞こえていた。
今日はくじ引きで決まった二人一組で、ももちゃん命名の『乙女の秋。恋の三角関係クッキー』を作っている。ほたるは紗良とペア。
恋のほろ苦さを表す抹茶と、甘酸っぱさを表すクランベリーをくっつけたハート型のクッキーと、口の中ですっと解けるメレンゲクッキー。
「どうして三角関係なの?」と尋ねた部員に「青春の恋は三角関係が大原則なのよん」と不敵に笑ったももちゃん。三角関係。嫌な響き。
「ほたるちゃん、私ね」
紗良が話しかけてくる。聞きたくない。
「よし。メレンゲ角が立った。これを絞ればいいんだよね」
「私、篤君が好きみたい」
「!」
ついに、言われてしまった。
知っていたけど知りたくなかった。
胸の辺りが重苦しくて、吐きそう。
頬を赤く染める紗良は、女子のほたるでさえ惚れそうに可愛いかった。
「篤のことを思うなら、笑ってないで部活行くように説得した方がいいんじゃない?」
(しまった)
つい、きつい口調になってしまい、慌てて作り笑いを浮かべた。
「ほら、篤ってちゃんと言わなきゃわかんない、ガキみたいなとこあるから」
「そうかな」
「そうそう」
チラリと紗良を伺うと、紗良は「そうかもね。私、部活行くように説得してみるね」と、感心したように頷いて、再びクッキー生地を捏ね始めた。
ふう、と小さくため息。危ない、危ない。
「ほたるちゃんは、このクッキー篤君にあげるの?」
「え? は? まさか!」
思わずハンドミキサーを浮かしてしまい、メレンゲがぴしっと顔に飛んだ。
「あげないの?」
「当たり前じゃん」
フリフリのエプロンが似合う紗良。男子はこの姿に萌えるんだろうな。
「ほたるちゃんは、篤君のことどう思ってる?」
「どうって、幼馴染みの友達だけど」
「それだけ?」
紗良の真っすぐな瞳に嫌な予感がした。ももちゃんがこっそり聞き耳を立てている。
「もちろん。それ以外ないじゃん」
「良かったー」と微笑む紗良。ヤバイ。と、思った。
ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ。
「バカなこと言ってないで、手を動かそう」
この話題はさっさと切り上げないとヤバイ。ほたるはメレンゲ作りに集中する。
ガーーーと、ハンドミキサーが立てる騒音が響いているのに、妙に自分の心臓の音が大きく聞こえていた。
今日はくじ引きで決まった二人一組で、ももちゃん命名の『乙女の秋。恋の三角関係クッキー』を作っている。ほたるは紗良とペア。
恋のほろ苦さを表す抹茶と、甘酸っぱさを表すクランベリーをくっつけたハート型のクッキーと、口の中ですっと解けるメレンゲクッキー。
「どうして三角関係なの?」と尋ねた部員に「青春の恋は三角関係が大原則なのよん」と不敵に笑ったももちゃん。三角関係。嫌な響き。
「ほたるちゃん、私ね」
紗良が話しかけてくる。聞きたくない。
「よし。メレンゲ角が立った。これを絞ればいいんだよね」
「私、篤君が好きみたい」
「!」
ついに、言われてしまった。
知っていたけど知りたくなかった。
胸の辺りが重苦しくて、吐きそう。
頬を赤く染める紗良は、女子のほたるでさえ惚れそうに可愛いかった。