ようこそ、むし屋へ    ~深山ほたるの初恋物語編~

風の噂と逃亡と同窓会

 蜻蛉町のような小さな町では、隠しごとは結局、風の噂で伝わってくる。みんな、篤の死をなんとなく知ってしまっていて、なんだか居心地が悪かった。
 さなえちゃんたちともなんとなく疎遠になって、それでもいたたまれなくて県外の大学へ入学した。

『シルバーウィークにチーム田園で同窓会やろうよ』
 と、唐突にさなえちゃんから電話が掛かってきたときには、正直驚いた。

『ほたる、絶対来るんだよ! わかった?』
 有無を言わさぬ口調に、ほたるはつい、頷いてしまったのだが。
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