ようこそ、むし屋へ ~深山ほたるの初恋物語編~
蜻蛉神社
「ほえ~。本当にトンボだらけ」
手水舎の水が流れるところもトンボの顔、狛犬の代わりに二匹のトンボの石像、神社の鈴の上部にも金色のトンボがついている。
拝殿の中には黄金の玉に乗った黄金のトンボが鎮座していた。
「SNS映えしそう! こんなとこ、地元にあったなんて知らなかったなー。あ、これ、和歌かな?」
太い柱に貼られたセピア色の札の文章を、ほたるはそれっぽく読み上げる。
「秋津羽の~、姿の国に~跡垂るる~、神の守りや~、我が君のため~……あ!!!」
『アキツハノスガタノクニニアトタルルカミノマモリヤワガキミノタメ』
これってひいじいじのまじないだ! と、気づいた瞬間、ふいに異様な感じの風がざわざわと吹いて、神社の木々を揺らした。
「え」
ドキリとして周囲を見回し、首を捻る。なんだろう。違和感があるんだけど。
ブーーーン
考え込むほたるの耳元で羽音がして、何かが地面にポトリと落ちてきた。
「?」
そっと近寄ると小さな虫だった。体が赤、青、緑にキラキラ輝いている。妙にピカピカした虫。
「綺麗~。宝石みたい」
もっとよく見ようと近寄った途端、虫はブンとほたるから離れるように前へ飛んで、またちょっと先にポトリと降り立った。そして動かなくなる。
「?」
ほたるがまたそうっと近づくと、虫はまた数メートル先へブンと飛んで着地し、止まった。ほたるが動かないと、何故か虫も動く気配を見せない。
またそうっと近づいた。キラキラの虫は、ブンと飛んで少し先に着地する。
また近づく。ブンと飛んで着地。
もう一度近づく。ブンと飛んで着地。
もう一度。ブン。もう一度。ブン。もう一度……
夢中で追い続け、さすがに腰が痛くなって、かがんでいた身体を伸ばしたら、錆色の煤竹で囲われた和モダンなお店が目に飛び込んできた。
高級料亭を思わせるようなしっくりと落ち着いた佇まい。
手水舎の水が流れるところもトンボの顔、狛犬の代わりに二匹のトンボの石像、神社の鈴の上部にも金色のトンボがついている。
拝殿の中には黄金の玉に乗った黄金のトンボが鎮座していた。
「SNS映えしそう! こんなとこ、地元にあったなんて知らなかったなー。あ、これ、和歌かな?」
太い柱に貼られたセピア色の札の文章を、ほたるはそれっぽく読み上げる。
「秋津羽の~、姿の国に~跡垂るる~、神の守りや~、我が君のため~……あ!!!」
『アキツハノスガタノクニニアトタルルカミノマモリヤワガキミノタメ』
これってひいじいじのまじないだ! と、気づいた瞬間、ふいに異様な感じの風がざわざわと吹いて、神社の木々を揺らした。
「え」
ドキリとして周囲を見回し、首を捻る。なんだろう。違和感があるんだけど。
ブーーーン
考え込むほたるの耳元で羽音がして、何かが地面にポトリと落ちてきた。
「?」
そっと近寄ると小さな虫だった。体が赤、青、緑にキラキラ輝いている。妙にピカピカした虫。
「綺麗~。宝石みたい」
もっとよく見ようと近寄った途端、虫はブンとほたるから離れるように前へ飛んで、またちょっと先にポトリと降り立った。そして動かなくなる。
「?」
ほたるがまたそうっと近づくと、虫はまた数メートル先へブンと飛んで着地し、止まった。ほたるが動かないと、何故か虫も動く気配を見せない。
またそうっと近づいた。キラキラの虫は、ブンと飛んで少し先に着地する。
また近づく。ブンと飛んで着地。
もう一度近づく。ブンと飛んで着地。
もう一度。ブン。もう一度。ブン。もう一度……
夢中で追い続け、さすがに腰が痛くなって、かがんでいた身体を伸ばしたら、錆色の煤竹で囲われた和モダンなお店が目に飛び込んできた。
高級料亭を思わせるようなしっくりと落ち着いた佇まい。