ようこそ、むし屋へ    ~深山ほたるの初恋物語編~

取り扱っている『むし』が胡散臭い!!

「古来より中国では、人は生まれ落ちた時から上尸(じょうし)中尸(ちゅうし)下尸(げし)と呼ばれる三尺(さんし)という虫を体内に宿しているとされ、上尸は青または黒色を帯び、金欲や首より上の病気を、中尸は白色または青色及び黄色を帯び、食欲や臓器の病気を、下尸は白色または黒色を帯び、淫欲や下肢の病気を引き起こすとされてきました。また、六十日に一度訪れる庚申の日に眠ると、人の体内から離れた三尸が、人命を司る神様に宿主の悪事を告げ口し、寿命を縮ませるとも言われています。日本では、昔から赤ちゃんの夜泣きや癇癪は赤ちゃんの体内に宿る疳の虫が騒ぐせいと言われていますね。虫の居所が悪い、虫が好かない、腹の虫が収まらないなど、人間の感情を虫で表現した慣用句も数多く存在するのはご存知のとおり。これらの虫、つまり人の体内に宿る虫が当方の取り扱うむし、虫の中に人の文字が二つ入るむしのことなのです」

「……」
 なんだか、話が胡散臭くなってきた気がする。

(もしかして、このお店って)
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