ようこそ、むし屋へ    ~深山ほたるの初恋物語編~

何かが始まる予感

 ほたるの体内で育ち、蛹から羽化したむし。

 美しいブルーの翅の蝶に似たむしは、ほたるの頭上に青い鱗粉を振りかけながらふわふわ飛び回り、向尸井がふうっと息を吹きかけると、キラキラした粒子となって消えていった。
 幻想的で、淡い初恋の終わりみたいに、儚くも美しい光景だった。

『ほっちゃん、禍福は糾える縄の如しじゃ』
 ひいじいじの声が内側で聞こえた気がして、ほたるは胸に手を当てる。

 ここから、何かが始まる予感がしていた。

                       完
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