世界くんの想い人
世界が私を軽々と抱きかかえると、あっという間にベッドに縫い付けた。

「ちょっと……お風呂……」

「あとで一緒にはいろ」

そのまま世界はネクタイを横に引くと、利き手の左手で私のシフォンのブラウスのボタンをあっという間にすべて外す。そして世界が満足げに笑った。

「すっごい痕っすね。誰につけられたの?」

その痕一つ一つに口づけながら世界が色っぽい視線を私に向ける。

「そん……なの……言わなくても……」

「言えよ、俺のモノだって」

相変わらず世界はこうやって意地悪なことを言いながらも、頭の先からつま先まで丁寧に口づけながら優しく甘く私を溶かしていく。すぐに目の前の世界がぐるんぐるんと回る。

(あれ……めまい?……)

「……好きだよ……声我慢すんなよ」 

「ンン……ちょっと……」

身体が熱い。
そしてなぜだかめまいと共に胃がむかむかしてくる。

世界が私のブラのホックを外したときだった。

「っ!……ちょっとごめ……」

「え!梅子さん?!」

私はそのままトイレに駆け込むと胃の中のものを吐き出した。世界が慌てて追いかけてくると直ぐに嘔吐している私の背中を摩る。

「梅子さん……大丈夫っ?え、胃腸炎かな、病院いこっか」

私はすぐに首を振った。私は小さい頃から滅多に風邪をひかない。それに熱があるわけでも、喉が痛いわけでもない。私は鞄をゆびさした。

「世界くん……ちょっと……私の鞄の中にはいってる小さい紙袋もってきてくれない」

「え?紙袋っすか?」

世界が首を捻りながらもってきた紙袋を受け取ると、私はトイレの鍵を閉めた。
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