上司の甘い復讐



私は昨日、無意識のうちにUSBを持ち歩いていたのかもしれない。

昨日行った場所といえば……




会議室の前を通りかかった。

灯りのついた会議室の扉は、微かに開いている。

そこから、


「無くした?」


焦った男性の声が聞こえてきた。

私は思わずその部屋の中を覗いていた。




狭い会議室の奥には、普段なかなか姿を見せることのない専務の姿があった。

初老の彼は、眼鏡の奥の瞳を丸くして、前にいる男性を見つめる。

彼の前にいて頭を低く垂れているのは……


「申し訳ありません。私の管理不足で」


なんと、翔太さんだったのだ。

怒ってオフィスから出て行ったと思ったが、こんなところにいるなんて。


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