上司の甘い復讐
余裕なのはどうやら翔太さんだけのようで、横山さんの刺すような視線が痛い。
いや、横山さんだてではなく、みんなの視線が痛い。
そして、放心状態の山村君がいつの間にか返ってきていて、なんだか自信を取り戻したような顔をしている。
山村君は不意に私に告げた。
「川崎さんと僕じゃ、僕の圧勝ですよね」
「……え?」
なんでそうなるの!?
慌てる私に、山村君は言う。
「だって大倉さん、川崎さんのこと嫌っているじゃないですか」
その言葉に愕然とする。
私は確かに翔太さんが嫌いだったしハゲ崎だとか罵るが、今は大好きだ。
本当に大好きだ。
だけど私が彼女ですと言う勇気も正直ないのも事実。
ぐっと口を噤むしかなかった。