上司の甘い復讐



そんな私を、


「大倉」


翔太さんが呼ぶ。

私が彼に近づくと、翔太さんは周りに聞こえないように小声で告げた。



「もうすぐ終わるから、先に帰ってろ。

あとで一緒に色々取りに帰ろう」


そう言って翔太さんは、ぴかぴか光る銀色の鍵をくれた。

ずしっと重いその鍵を受け取ると、胸がきゅんと熱くなる。

私、本当に翔太さんの家に行っていいんだと嬉しくなる。


「それ、お前のだから」



つまり、合鍵だよね。

私は胸の前でぎゅっと握りしめ、オフィスを出た。



不安だけど、翔太さんのおかげでなんとか毎日をこなしている。

私はもっと、翔太さんを信じなきゃ駄目だろう。

翔太さんはきっと、圭介とは違うから。



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