上司の甘い復讐
そして、麻理子さんは私たちのほうに向き直って教えてくれる。
……私は分かっているのに、私だって理解していないとでも言うように。
「今日は、『京抹茶シリーズ』の打ち合わせに来たの。
舞妓さんではなくて、有名老舗の社長さんたちとお話する予定だわ」
山村君が何も答えないから、
「そ、そうなんですね!
あ、ありがとうございます!!」
私が空気を読んで、麻理子さんに礼を言う。
これじゃあやっぱり、私だって分かっていないと思われてしまう。
だけどこれ以上器用な振る舞いも出来ず、麻理子さんと仲良くなる気にもならない。
だから私は口を噤んで下を向いた。