上司の甘い復讐



もちろん、私の体調を心配しているそぶりは全くなく、いつもの事務的なキツい声で。

それではっと現実に引き戻される。

恐る恐る翔太さんを見るが、彼は私を見ようともせずに資料に目を落としている。

その様子にいちいちずきんと胸が痛む。




このまま放っておいて欲しいのに、


「ほら翔太。そんなこと言わないの」


麻理子さんがまた甘い声で言う。

麻理子さんこそ、そんなことを言わないで欲しい。

これじゃあ、麻理子さんが彼女みたいじゃん。


「翔太はそんなだから、部下から嫌われるんだよ」



いや、私、好きなんですけど!なんてこと、言えるはずもなく下を向く私。

なんだか悔しかった。

彼女は私なのに……


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