上司の甘い復讐




背の高いハゲ崎がすたすた歩くから、私は小走りで後を追う。

意地悪なハゲ崎は私なんかを待ってはくれない。

私は邪魔なんだろうと思ってしまう。




オフィスの階段を駆け降りる時に、早乙女さんとすれ違った。

髪を綺麗に巻いて、お洒落なスーツを着た早乙女さんは、


「あ、翔太!」


すかさずハゲ崎を呼ぶ。

ハゲ崎は私を待ってはくれないのに、早乙女さんの前では足を止める。

早乙女さん、綺麗だなあ。

鼻が高いし目も大きいし、芸能人みたいだなあ。

思わず見惚れてしまう私を無視して、早乙女さんはハゲ崎に聞く。


「外回り?」


「あぁ、展示会に」


ハゲ崎はいつものようにそっけなく答える。


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