上司の甘い復讐





仕事中といったら……

今日の展示会のパンフレットやメモは?

あれ?お金は?

私、動揺して手ぶらでオフィスを出てしまった。

今さら手ぶらですだなんてハゲ崎に言ったら、ハゲ崎はきっと激怒するだろう。

だけど言わなきゃ……





「あ……あの……」


蚊の鳴くような小声で言った私を、ハゲ崎は立ち止まって振り返る。

その視線が刺さるように痛い。


「あの……私、鞄を忘れて……」



沈黙が訪れた。

ハゲ崎は、怒りを貯めているのだろうか。

それとももうすでに怒りは貯まっていて、それを私に向けて放出するのだろうか。

考えただけでも震えてくる。

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