上司の甘い復讐
演技をしていたのは、どっち?
「大倉、なんだこの『展示会、良かったです』っつー、ふざけた報告書は!!」
「は……はい。すみませんでした」
「すみません、じゃねぇ!早く直せ!」
ハゲ崎は、ぽーんと報告書を机に投げた。
そんなハゲ崎を見ながら、ハゲ崎ハゲろと頭の中で呪文のように繰り返す私。
ハゲ崎が私のことを好き……?なはず、ないだろう。
好きだった女にこんな態度を取るなんて、血の通った人間じゃ考えられない。
「そうだ、きっとハゲ崎は幽霊なんだ!」
思わず声に出してしまうと、奴にぎろりと睨まれた。
「……は?何ほざいてんだ?」
殺意さえ感じるその視線。
私はこの視線がいつも怖い。
ハゲ崎に睨まれた私は、蛇に睨まれたカエルのように怯えているが、前に座る横山さんなんかはくすくす笑っている。
他人事だと思って!
私は俯きながら、ハゲ崎ハゲろと心の中で唱える。
そしてある事実に思い当たる。
私が嘘をついているのと同じように、ハゲ崎だって嘘をついているに違いない。
だって、どう考えてもハゲ崎が私を好きだったとは思えないから。