上司の甘い復讐
黙って俯く私に、横山さんは言う。
「でも、川崎さんのことも分かってあげて?
瑞希ちゃんの報告書、いつも最終的に川崎さんが直しているし。
瑞希ちゃんに他部署から怒りの電話がかかってきたら、川崎さんが謝って罪を被っているんだよ?」
「……え?」
そうなんだ。
散々罵倒されているから、奴が私を庇っていてくれているなんて思ってもいなかった。
だけどきっと彼は、私の限界のところでストップさせて、あとは全部受け止めていたんだと改めて知る。
思い返せば、カッターナイフだって私のせいだ。
昨日帰る前にコピー用紙の箱が開かなかったから、果物ナイフで切ったんだ。