溺愛されては困るのです ~伯爵令嬢、麗華の憂鬱~
 取り巻きを従えて、小百合をいじめ抜く。
 女学校の卒業式では嘘の通達で参加させなかったり、舞踏会でドレスを汚したりやりたい放題で、最後には悪党どもを雇って彼女を襲わせるという暴挙に出た。

 流星が小百合を助け、襲撃の主犯が麗華だとバレてしまい逮捕。
 麗華を助けようとした麗華の両親は犯人を暗殺しようとするが、それもバレてお家断絶。麗華は入ったら最後、二度と出られないという尼寺へ送られるのだ。

 勧善懲悪にすっきりしたところで「次は――」と、バスのアナウンスに気づき、スマホを閉じる。

 石川優子、大学生二十歳。
 年齢イコール彼氏いない歴。恋愛はファンタジーの中だけで楽しんでいる。

(私もいつか恋ができるかな)

 横断歩道を渡りきり、見上げた空にぽっかりと浮かんだ月が、やけに大きく感じて足を止めた。

 満月だからなのか?
 それにしてもなにかが変だと思い首を傾げた。

 まるで優子に覆い被さるように、月はどんどん大きくなり……。
 えっ? と思ったのが、優子の最後の記憶となった。

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