溺愛されては困るのです ~伯爵令嬢、麗華の憂鬱~
「あの……体調がよろしくないのでしたら、今夜の舞踏会はお休みしますか?」

 舞踏会。
 このファンタジーの時代背景はなんちゃって明治大正。

 華族の女性は、バッスルスタイルという腰のあたりがふんわりと盛り上がったドレスを着て、鹿鳴館やホテルで執り行われるパーティに行く。

 荒鬼家は金で伯爵という身分を手に入れたといわれるくらいなので、とてつもない資産家である。

 麗華はここぞとばかりに着飾り、まるで舞踏会が生き甲斐のように顔を出していた。
 許婚の流星を初めて目にしたのは、麗華が十五歳で社交界にデビューした舞踏会である。

「舞踏会は行くわ。ずっと閉じこもっていたから気晴らしがしたいもの」

 着飾ってチャラチャラしている場合じゃないが、今日の舞踏会はなんとしても行かなきゃいけない。

 ヒーローである一条流星も、ヒロインの小百合も来る。
 行って計画を実行するのだ。
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