溺愛されては困るのです ~伯爵令嬢、麗華の憂鬱~
 がしかし、床に落ちる寸でのところでハンカチを掴んだのが一条流星だったのだ。

『ありがとうございます』
『いいえ』

 見つめ合うふたりと、その隣で愕然とする麗華。

 そんなことが度々おきた。
 つい先頃、麗華が池に落ちたときも、流星がとっさに小百合の手を引いたから小百合は落ちずに済んだのだ。 


「麗華、今夜は随分控えめね」

 顔を上げると母が麗華のドレスをしげしげと見ていた。

 若干薄めのブルーのドレスは、確かにいつになくシンプルである。

 手持ちのドレスからもっとも目立たないものを選んだ。
 この世界で平和に生き抜くためにも、少しずつキャラ変していかなきゃいけない。

 本当ならもっと清楚にしたいが、いかんせん顔が派手なだけにどうにもならず、あきらめて顔に似合う派手なルビーのアクセサリーでバランスをとっている。

「この方が、宝石が目立つかしらと思って」

 母はしげしげと麗華を見て、なるほどとうなずく。

「そうね、確かにルビーの赤が映えるわ」
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