溺愛されては困るのです ~伯爵令嬢、麗華の憂鬱~
 母の隣で「ふたりとも、もしドレスや宝石が足りなければ買ったらいい」と父が微笑む。

 父を振り向いた母は、満足そうに微笑んだ。

「ありがとうございます。あなた」

 母は貧乏な公家の出身で、美貌と家柄を武器に父に近づき、父に見初められた。

 やたらと自己評価が高い両親に、ワガママ放題に育てられた麗華が傲慢に育つのも当然と言えば当然だろう。

 優子の両親は違った。

『兄妹は優秀なのに、お前ときたら』
『私はお前が恥ずかしい』

 兄は実家の病院を継ぐべく外科医になり、妹は学生のうちに司法試験に合格。ふたりとも最難関の国立大学に通った。

 優子が進学した大学も一般的には難関とされているが、両親には三流でしかなかった。

 愛された記憶も実感もない。

 それに比べたら、麗華は幸せだと思う。

 荒鬼の両親は、心から一人娘の麗華を愛している。


「まあ、なんにしても今夜も麗華が一番綺麗よ」
「もちろんだ」

「ありがとう。お父様お母様」
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