溺愛されては困るのです ~伯爵令嬢、麗華の憂鬱~
「なにも急いで結婚しなくてもいいとは思うが、流星くんなら嫁ぎ先として異存はない」
そんな物わかりのいいことを言わないで、こんなときこそ早すぎると反対してほしいのに。
父はどこまでも娘に甘い。
「一条公爵と話したんだが、結納を交わした後、御披露目をどこでやろうかと――」
(えっ!)
ギョッとして「ゴホゴホ」とむせてしまった。
だから早く破談にしなきゃいけないのに! と、心で叫ぶ。
身分は一条家の方が高い。荒鬼家からごり押ししたのに、こちらから破談など言えるはずもない。なにがなんでも、彼の方から告知してもらう必要があるのに。
「あら麗華大丈夫?」
「ええ、大丈夫、よ」
非常にまずい展開だ。
麗華は優子が憑依する直前、『お母様お願い、早く結納して安心したいの』と、結納を急かしている。おまけに今夜は衆目を浴びてのダンスだ。
婚約破棄など両親は露ほども考えていないだろう。
帰り道で婚約破棄の話をするつもりでいたが、この状況では言いだせない。
密かに溜め息をつく。
そんな物わかりのいいことを言わないで、こんなときこそ早すぎると反対してほしいのに。
父はどこまでも娘に甘い。
「一条公爵と話したんだが、結納を交わした後、御披露目をどこでやろうかと――」
(えっ!)
ギョッとして「ゴホゴホ」とむせてしまった。
だから早く破談にしなきゃいけないのに! と、心で叫ぶ。
身分は一条家の方が高い。荒鬼家からごり押ししたのに、こちらから破談など言えるはずもない。なにがなんでも、彼の方から告知してもらう必要があるのに。
「あら麗華大丈夫?」
「ええ、大丈夫、よ」
非常にまずい展開だ。
麗華は優子が憑依する直前、『お母様お願い、早く結納して安心したいの』と、結納を急かしている。おまけに今夜は衆目を浴びてのダンスだ。
婚約破棄など両親は露ほども考えていないだろう。
帰り道で婚約破棄の話をするつもりでいたが、この状況では言いだせない。
密かに溜め息をつく。