溺愛されては困るのです ~伯爵令嬢、麗華の憂鬱~
「喜んでくれているといいけど……」

 とにかく、ひとつひとつ修正していくしかない。小百合と流星が無事にハッピーエンドを迎える日まで。

 溜め息が出る一方で、これまでの麗華の気持ちが少しずつわかってきた。

 麗華は怖くて怖くて仕方がなかったのだ。

 虚勢を張ってツンと顎を上げているが、心の中は劣等感に溢れていた。

 小百合の清楚な美しさやセンスのよさ、性格のよさもなにもかもが、麗華には眩しいほど輝いている。

 麗華は不器用で、どんなに頑張っても上手な刺繍はでないし、派手な顔立ちゆえに小百合のような可憐な女性にはなれない。

 自分にはないものをすべて持っている小百合に、どうあっても勝てないと足掻いていた。

 もっと自信を持てばよかったのにと思う。

 誰もが振り向くような美人だし、頭も悪くないのに。
 孤立を恐れて取り巻きを作っていたけれど、孤独は麗華が思うほど怖くはない。

 少なくとも麗華には、心から愛してくれる両親がいる。

 優子は孤独だった。
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