溺愛されては困るのです ~伯爵令嬢、麗華の憂鬱~
 ハッとする麗華に流星は片手を上げて微笑む。

(ま、まさか私? 違うわよね?)

 キョロキョロと見回したが、主催者の小百合は麗華とはずっと離れた隅の方にいる。

(となると、えっ、私?)

 令嬢たちから、キャッキャと密かな歓声があがる。

「うらやましいですわぁ、麗華さま」
「先日の舞踏会でのダンスといい、流星様ととっても仲がよくて」

 もう一度流星を見れば、彼はまだこっちを向いている。
 仕方なく「お、おほほ……」と、苦笑した。

 いったいどういうつもりなのか。

 なんにしても、いずれ彼と結ばれるのは小百合だ。

 考えても仕方がないので、同じテーブルの令嬢たちとの他愛ない会話と美味しいスイーツを楽しみ、やがてオペラ歌手が登場すると、音楽と美声を楽しんだ。

 原作通り、オペラ歌手はドレスの裾を踏んづけて危うく転びそうにはなったが、歌声は素晴らしかったので、誰もバカにはしなかった。


 無事イベントが済んだところで席を立った。
 長居は無用である。
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