溺愛されては困るのです ~伯爵令嬢、麗華の憂鬱~
「本日はお越しいただき、ありがとうございます」
「こちらこそ、お招きありがとうございます」

 主催者の小百合が挨拶をして回っている。
 あちらこちらから「今日は一段とお美しい」「眩しいほどだ」などと声がかかっていた。

 恥ずかしそうにこわばった笑みを浮かべ、頬を染める彼女は実際美しい。
 限りなく白に違い黄色と淡いピンクという色合いは、彼女に似合っているし、ところどころに施された透明なビーズがキラキラと輝いて、まるで天使のようだ。
 男性客の目を奪うのも当然だろう。
 
 だが、ただひとり一条流星だけは怪訝そうに首を傾げた。

 小百合のドレスに、なんとなく見覚えがある。
 とはいえ、女性のドレスはよくわからない。
 誰がいつどんなドレスを着ていたかなんて、多分ひとつも思い出せない自信がある。気のせいだと思い改めワイングラスに手を伸ばした。

 一条家は山梨にワイナリーを所有している。
 急に参加を決めたお詫びに、昨日ワインを一ケース届けておいた。
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