溺愛されては困るのです ~伯爵令嬢、麗華の憂鬱~
今夜の舞踏会には独身男性も結構いる。
うまくするとひとりくらい恋の相手を見つけられるかもしれないと、ぼんやり思う。
かわいらしくはなくても美人だし、スタイルだっていいのだ。
ちゃんと軌道修正できれば、悪役だって幸せをつかめるかもしれない。
(そうだよ、がんばろう)
よし! っと拳を握る。
流星からの返事はないが、別れの意思はちゃんと伝えたのだから、もう十分なはず。
「では、失礼します」と去ろうとすると――。
「なぜだ?」
呼び止められて足を止める。
振り向くと、流星は一歩前にでた。
「理由は?」
(えっ? 理由なんて必要?)
聞かれるなんて予想もしなかった。
この世界は、彼がヒーローでヒロイン役は小百合と決まっている。
急いで流星と別れないと、破滅へまっすぐらなのだ。
とはいえ、そのまま口にするわけにもいかず、脳裏をよぎった正直な想いを口にした。
「耐えられないんです」
彼は怪訝そうに、美しい眉を歪める。
「なにに?」
「私、愛のある結婚がしたいんです。流星様は私を愛していないでしょう?」