溺愛されては困るのです ~伯爵令嬢、麗華の憂鬱~
「なんですって!」
 麗華の口から思わず素っ頓狂な声がでた。

「申し訳ありませんお嬢様。頼んだ男たちとは連絡がつかないようで……」

 頭を下げるのは、麗華の乳母だ。

 麗華は優子が憑依する前に、小百合を襲撃するよう、すでに男たちの手配をしていた。

『私の婚約者にちょっかいを出す酷い女なの』と、乳母に泣くながら訴え、襲うように頼んだのである。
 憑依してすぐ、誤解だったと伝え、返金はいらないから中止にするよう乳母に頼んだのだ。

「お互いに誰かわからないように手を尽くした結果で……」

 これ以上、乳母に言っても仕方がない。
 彼女は万がいちにも悪事がバレないよう、徹底してくれたのだ。

「わかったわ。ありがとう。大丈夫よ心配しないで」

「くれぐれも脅すだけで、危害を加えないよう念を押してありますから」

「そうよね」

 乳母を見送り、部屋の扉を閉めると、麗華はその場に崩れ落ちた。

 やはり運命は変えられないのか。

「どうしょう。どうしたらいい?」

【伯爵令嬢 八十八夜の凶行】
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