溺愛されては困るのです ~伯爵令嬢、麗華の憂鬱~
 あげくに『私を連れて行ってくださらないのなら、奥様に言いつけます!』と責められて、仕方なく連れてきたのである。

「ルビーの指輪ですよね?」
「そう。昨日公園でカステラを食べる前には間違いなく指にあったの」

「探すにしても、夜明けを待った方がよくないですか?」

 もっともな意見だが、そこはわがままなお嬢様ぶりを発揮した。
「いやよ。気になって眠れないわ。寝不足で吹き出物ができたら小桃が責任とってくれる?」

「そ、それは……。では私だけで行きますから」
「ダメ。ついでに私は夜の公園が見たいんだもの。それにまだ七時よ? もともと橘侯爵家のお茶会に行く予定だったんだから、別に心配ないじゃない」

 なんだったら、ルビーの指輪を男たちに渡してもいい。
 とにかく男たちと話をつけないと。

「それにしても、今夜はなんとなく不気味な夜ですね」

 小桃は月のない空を見上げる。

 ガス燈に小さな虫でも入ったのだろうか。チリチリと細かい火花を散らし、かと思うと青白い炎がゆらゆらと揺れた。
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