念願の婚約破棄された悪役令嬢は、なぜか廃嫡寸前の変人王子に執着される
その努力が実り、婚約破棄されるのだ。
これほど嬉しいことはない。

「シャローラ。
君は……」

珍しく私が悲しんでいるようにでも見えたのか、動揺した王子が声をかけてくる。
そのタイミングで勢いよく顔を上げた。

「婚約破棄してくださってありがとうございます。
オーガスト王子と別れられて、清々しますわ。
では、ごきげんよう」

口角を美しくつり上げ、これ以上ないほどいい顔で笑う。
そのまま呆然としている王子を残して、会場を出た。
これで念願が叶ったのだ、帰りの馬車の中で思わず笑ってしまったほどだ。

……婚約破棄されたのに私が嬉しそうで、気でも狂ったのかと家族はしばらく腫れ物にでも触るような態度だったが。


「今日からここが私の職場、か」

目の前にそびえ立つ城門を見上げる。
オーガスト王子から婚約破棄されたのに反省の色もないような私は、性根をたたき直してこいと父親からお城へ上がらせられた。
お城では侍女として、行儀見習いのために良家の娘が働いている。

侍女長に挨拶したあと、私が連れてこられたのはギリギリ城壁内にある、あばら屋だった。

「あなたにはコーデリック王子のお世話をしていただきます。
なにをすればいいかは王子に聞いて。
じゃあ」

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