甘さはひかえめで。
「じゃあメモ渡すから後でも…」
「本当に急いでるので!!」
こっちからA組の教室行かないと、茜くん勝手に帰っちゃう可能性あるし!
とにかく早く八神くんから逃げようと、あわてて教室を出ようとしたら
ちょうどドアのところに立っていた人にドンッとぶつかってしまった。
「あっ、す、すみませ…!」
「忙しないな、乃々」
上から降ってきた声に、『えっ?』と顔をあげた。
「茜くん!」
「走って教室出てくの危ないだろ。小学生でもわかるよ」
「ご、ごめん…」
八神くんがいなければ、そんな急ぐはずじゃなかったのに。
茜くんに怒られちゃった…。
「あ、カバンのチャックも開いてるし。
乃々、ほんと鈍くさいね」
「うぅ…」
そんな鈍くさいって、言わなくてもいいじゃん。
今日だけで3回言われた。