甘さはひかえめで。


なにを話せばいいんだろうと思いながらも、お見舞いの品は早く渡したいので、コンコンと部屋のドアをノックした。


「茜くん、起きてる?」

「……乃々?」


部屋の外から声をかけたら、中から茜くんの声が返ってくる。

そしたらすぐに、ガチャッとドアが開いた。


「……わざわざお見舞いに来てくれたの?」


そう言って首を傾げる茜くんは、球技大会の時より機嫌が良さそう。


「あ…うん!
あ、これ、ゼリーとか買ってきたから!」


袋をガサッと開くと、茜くんが中を覗き込んで、『みかんがよかったな』と呟いた。


「ご、ごめん…!パインゼリーです…」

「パインはないでしょ」

「そ、そうかなぁ…アリだと思うけどなぁ…」


文句を言いながらも、茜くんは『もらうね』ってパインゼリーを手に取った。


「あっ!スプーンもらってくる!」


体調悪い茜くんを動かすまいと、ドタドタと階段を駆け下りて

茜くんのお母さんからスプーンを借りてまた二階に駆け上がった。


「スプーン取ってきた!」

「……ほんと忙しないね」


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